10月27日(日) UPAナショナルズ最終日

今日で今年のすべてが終わる。4月から始まったトライアウト。8月のハワイでの世界クラブチーム選手権。そしてセクショナルズ(一次予選)、リージョナルズ(二次予選)。皆、まるまる6ヶ月間のトレーニングしてきたことをすべて出し尽くす意気込みだ。

9時からの決勝戦のために7時半前にはフィールドに到着。スパイクに履き替える。各自思い思いに体を動かしたり、スロー練を行うが、やけに静か。決勝戦ということで、さすがにナーバスになっていることもあるだろうが、皆のうちに秘める闘志をひしひしと感じる。チームメイト同士が目を合わすと無言でうなずき合う。

黙々と各自アップした後、8時くらいからチーム全体でジョギング&ストレッチ。これは去年はFurious George ではやらなかったことだが、今年はトーナメントでは必ず行うようになった。ウォームアップという目的の他に、相手チームにFurious Georgeを見せつけると同時に、チームの一丸となって試合に臨むという感覚を皆が感じるのが目的だ。

キャプテンの1人のアンドリューは以前、僕に「アップの時はとFurious Georgeというチームに最大限のプライドを持ち、相手をにらみ潰す意気込みでジョギングするんだ!」と言った。それ以来、僕も常にアップの時は皆と同様に堂々と自信をみなぎらせながらジョギングするようになった。これがどれだけ相手に影響を与えるかはわからない。しかし、チーム全体のモチベーションを高めるのに良い効果を与えていることは確かだ。

試合前の円陣(ハドル)では、いつもコメントをするアンドリューが何も言わない。さすがに緊張しているのか。他の人が「今年一年間やってきたことをよく考えろ!」「この試合で自分のすべてを出し尽くすんだ!」というようなことを言った後、「Furious George!」と雄叫びを上げる。

決勝戦の相手はRing of Fire(ラリ:ノースカロライナ州)。はっきり言って、このチームが決勝戦に来るとは予想してなかった。予選リーグでCondorsを破ったSockeyeが来ると誰もが思っていたのだが、Ring of Fireが準決勝でそのSockeyeを15-8と予想外の点差で決勝戦に勝ちあがってきた。Ring of FireはUPAナショナルズの強豪だが、今まで決勝には出場したことのないチームだ。正直言って、地力はFurious Georgeの方が一枚上だろう。

とは言っても、UPAナショナルズでは過去のデータや実力の客観的評価は全く役に立たない。特に決勝戦という舞台では、信じられないほどの気合が入って、相手も120%の力を発揮してくるだろうし、流れ一つで勝利が簡単に入れ替わる。

オフェンススタートはフリップで選択権を得たFurious George。風がほとんどないというこの4日間、フリップで勝ったチームは必ず、オフェンスを選択していた。なぜなら、オフェンスキープが試合の最後まで続いた場合、ハードキャップで結局勝利するのは試合開始時にオフェンスを得たチームだからだ。例えば、準決勝のボストン戦ではFurious Georgeのブレイクが3回、Bostonのブレイクが2回だったから、Furious Georgeが17-16で勝利できたが、ブレイクの回数が同じだったら、Bostonが勝っていたことになる。

最初のポイントはターンオーバーも無しにFurious Georgeのオフェンスセットが難なくスコア。いいスタートを切る。そして次のディフェンスでFurious Georgeのマーク・サラリア(秋田ワールドゲームズのカナダ代表メンバーの1人)がダイブカットしていきなりブレイクチャンスを得るが、その後のオフェンスをあっさりミスし、Ring of Fireが苦しみながらもスコア。1-1となる。そして次のFurious Georgeのオフェンスに対して、ジャンク(ゾーン?)をしかけてくる。それに焦ったのか2・3本目のパスでFurious Georgeのトービーがマイクへのパスをミス。ターンオーバー。

ゴールまで10mくらいの地点を奪ったディスクを確実にRing of Fireが得点して両チーム通して初ブレイク。2-1とリードを奪う。これで調子づいたRing of Fireは、次のポイントもブレイク。これはまたまたFurious Georgeのトービーが今度はミドルシュートをミスして起こしたターンオーバーにつけこまれたもの。これで2連続ブレイクとなりRing of Fireの3-1リードとなる。

ここで2ポイント連続でミスを犯したトービーは自分からベンチへ。代わりにディフェンスセットの主力、リッキーが入る。もうこれ以上ブレイクは許されない状況でFurious Georgeがスコア。3-2となる。その後、Furious Georgeのディフェンスセットは何度もターンオーバーを起こしながらも、オフェンスが全然噛み合わずブレイクできず。オフェンスは何とかキープし続けるものの、嫌な感じで6-4のRing of Fire リードまで試合が進む。

ここでFurious Georgeのアンドリューが溜まらずタイムアウト。ハーフタイムが9点(ゲームポイントは17点)だから、前半に追いつくためには絶好のタイミングだっただろう。皆が円陣を組むと、試合前にはなかったアンドリュー節が炸裂。「4月からやってきたトレーニングに自信を持て!」ということと、「なんで、この3日間やって来た事と違うことをこの試合でやってる?同じことをやればいいんだ!」という内容のことを「F*CKING!」を随所にちりばめながら叫ぶ。

いつも思うが、アンドリューの一言にはとても効果がある。迫力のある声と血管切れそうな顔で叫んでいる姿で皆をあっと言う間に一丸とさせる不思議な力ある。こんなことも試合後だから落ち着いて客観的に書けるが、その時は僕も皆と同じようにテンションがあがりまくっていた。

このタイムアウトで気合を入れたFurious Georgeは次のオフェンスをスコアし5-6とした後のディフェンスセットに、オフェンスプレーヤーのマイク、カーク、アルを投入。前半終了前に逆転を図る。この選手起用がぴったりハマリ、ガチマンで38歳のアルがダイブカット、そしてそのまま得点。Furious Georgeの初ブレイク。6-6となる。

これで一気に流れを掴んだFurious George。ディフェンスセットのオフェンスが見違えるように良くなり、さらに3連続ブレイク。トータルで4-6から5点連取で一気に試合をひっくり返す。9-6のFurious Georgeリードで前半を終了する。

後半もFurious Georgeの勢いは止まらない。後半最初のポイントもブレイクし、10-6。さらに次のポイントもブレイクし11-6。4-6でタイムアウトを取った後、ハーフタイムを挟んで実に7点連取だ。結局、ここで奪った5点差が試合を決定づけることになる。

その後、Ring of Fireがブレイクして13-10まで追いついたが、反撃もそこまで。最後のポイントは、16-12でFurious Georgeのオフェンスセット。アルのパスが試合初めにミスを連発しながらも後半は完全復活したトービーにミドルシュートが決まり、ゲームセット。17-12でFurious Georgeの勝利。UPAナショナルズ初優勝だ!

みんな最後のポイントをキャッチしたトービーのところにかけよる。大リーグや日本シリーズでピッチャーのところに皆が集まるような感じだ。とにかく、みんな言葉にならないことばを叫んで喜び合う。すべてはこの目標のために頑張ってきたわけだから。



試合後に落ち着いて分析したら、オフェンスがブレイクされたのは結局3回のみ。ターンオーバーはその倍くらいかな。準決勝のBoston戦ほどではないけど、結局はオフェンスセットの安定感がものを言ったと思う。ディフェンスセットのディフェンスは試合を通して悪くなかった。初めの方はディフェンスセットのオフェンスが調子悪かったので、ちょっと嫌な感じだったけど。

結局は地力の差が出たということだろう。それにしてもオフェンスセットは38歳のアル、35歳のアンドリュー、31歳のトービー、29歳のカーク、25歳のマイク、24歳のマーク・ロバーツ、19歳のダレク・アレクサンダーとベテランと中堅どころと若手がほんとにうまく噛み合っていた。マーク・ロバーツの控えが19歳のオスカー。それにたまにディフェンスセットの32歳のリッキーや28歳のマーク・サラリアが流れが悪い時にオフェンスに参加するという感じでよくまとまっていた。

ディフェンスセットでは32歳のリッキーに加え、37歳のジョナサン(かつてのNY・NY黄金時代のメンバー)、33歳のビフ、31歳のダレク・ジョンとグレッグと30代のベテランが大活躍だった。すごくいいチームだった、ほんとに。

去年と比べるとオフェンス、ディフェンスともにずば抜けた身体能力やスロー力がある人が減ったのだが、チームとしてのまとまりは数段上だった。やっぱり、アルティメットは団体競技。チームとしてのまとまりが非常に大切だと実感させられた。単純に個人の力だけを足し算したら、去年の方が確実に上だろう。

この試合も、準決勝と同様に僕の出番は無し。ひたすらサイドラインから声を張り上げ、ディフェンスをヘルプし、オフェンスを盛り上げていた。最後まで自分の名前がいつ呼ばれていもいいように用意はしていた。でも結局一度も僕の名前がコールされることはなかった。

正直なところ、決勝戦の舞台の芝を踏めなかったことはすごく悔しい。もちろんチームが優勝したことはとてもうれしいが、プレーヤーとしてはやはりその優勝にサイドラインからのヘルプでなくて、プレーで貢献したかったというのが本音だ。

チームは優勝。複雑な心境だ。個人的に6ヶ月やってきた成果を出しきれたか、燃え尽きることができたか、と言われると、即答できない。ビフが「お前は優勝チームの一員だ。」と言ってくれた。気持ちは本当に複雑だ。気持ちの中にもやもやしたのものがある。すっきりさせるのには時間がかかるだろう。

ただ、これだけは言える。この6ヶ月間、調子の上下はありながらも、恥ずかしくないだけのチャレンジ・努力はしてきた。すべての大会でチームのためにベストを尽くし続けてきた。それは胸を張って言える。チームはUPAナショナルズ初優勝という快挙。誇れる結果だ。

前を向いて堂々と歩いていこうと思う。上を目指して一段ずつでいいからステップアップしていこうと思う。まだまだ自分はレベルアップできる。改善する点はいくらでもある。アルティメットチャレンジャーのチャンレンジはまだまだ終わらない。

前の日      次の日

日記Index